一期治療を行う症例⑤ 前歯の埋伏
いつまで待っても、左右で対になる永久歯が片方だけ生えてこない場合は要注意です。歯が埋伏している(骨の中に埋まったまま)か、生まれつき欠損しているかもしれません。歯科医院を受診し、レントゲンで確認をしてもらいましょう。
この時期の埋伏歯で多く見られるのは上の前歯で、審美的・機能的に不要とされることはほとんどないので、まずは牽引(引っ張り出して歯列に入れる)することを検討してください。
埋伏している方向や、歯の形態にもよりますが、埋伏歯に装置が装着でき、矯正力に反応しさえすれば、通常は良い結果が得られます。しかし歯が周囲の骨と癒着(骨性癒着)するなどして反応がない場合や、装置がつけられない位置や方向に歯が埋まっていて、牽引ができないときは、その部分の歯は欠損しているものとして扱われるため、将来の矯正治療のプランの見直しが必要になります。
対応が遅れることで骨性癒着のリスクが高まるなど、治療成績が悪くなる要素が増えるので、早めの対応が好ましいでしょう。
一期治療を行う症例④ 歯と歯肉に損傷を起こす咬み合わせ
歯ならびが原因で咬み合わせが悪く、特定の少数の歯に必要以上の力が加わると、その部分の歯や歯肉にダメージを起こしやすくなります。
以下のような症状はありませんか?
①咬んだら痛い
②歯が動揺する
③歯肉が下がっている(歯が長く見える)
このような場合、修復能力が旺盛な子どもの時期に治療を行って、歯に適切な力がかかるようにすると、下がった歯肉が改善するといった、良好な結果が得られることがあります。
治療後の経過によっては、大人になって再び矯正治療が必要な状態になることもあります。しかし成長が止まり、生体の修復能力が下がった大人の場合は、歯ならびを整えても下がった歯肉を改善することが難しくなります。そのため、この時期に発見して治療を行うことは、一定の有益性があると思われます。
一期治療を行う症例③ 6歳臼歯の位置異常
乳歯が虫歯になり、抜けたり欠けたりしているのをそのままにしていませんか? 乳歯は永久歯が生えるための場所取りをするための重要な役割があります。
永久歯でいちばん最初に生えてくる6歳臼歯(第一大臼歯)は乳歯列の一番奥に萌出します。そしてその後、時間をかけて残る乳歯10本が同じ数の永久歯に生えかわってゆきます。
乳歯が早く抜けた場合、第一大臼歯が本来の場所より前にずれて出てくることがあります。そうなると、その後に生えてくる永久歯のスペースが少なくなり、歯ならびが悪くなったり、最悪の場合は、永久歯が埋伏(生えてこずに顎の骨の中に埋まったままになる)したりすることにつながります。
こういったケースでは、一期治療で第一大臼歯を本来の位置までもどす必要があります。
紹介したケース以外にも、乳歯を早期に失うことで、奥にある歯が手前に倒れて、後から生えてくる永久歯の場所をふさいでしまうことは多くあります。
乳歯だからといって甘く見ずに、しっかりと管理をしていきましょう。