なぜ矯正治療で歯が動くか?
矯正治療でどうして歯が動くか、疑問に思っていらっしゃる方は多いのではないでしょうか。実際に、患者さんから質問されることも多いです。
今回は簡単にその仕組みを説明したいと思います。
1.歯と歯周組織の構造
歯は、歯根膜という繊維性の組織を介して歯槽骨に支えられています。歯根膜の厚さは0.2〜0.3ミリ程度で、外力がかかった時に歯が適度に動けるための緩衝作用を果たしています。
2.歯に力をかけたとき
歯を図のように右方向に動かす力をかけた時、圧迫された方の歯根膜は縮み、引っ張られた方の歯根膜は伸びます。
3.歯槽骨が改造していきます
歯根膜の厚みを一定に保つため、圧迫された側の歯槽骨の表面に破骨細胞(骨を壊す細胞)が、引っ張られた側には骨芽細胞(骨を作る細胞)がそれぞれ出現し、骨が改造されていきます。
4.矯正治療はこの反応の繰り返しです
矯正治療が終わるまでこの反応が繰り返し起こり、歯が少しずつ目的の位置まで動いていきます。
その矯正治療、本当に必要ですか?
前回まで数回にわたり、子どもの時期に行う矯正治療の症例についてお話をしてまいりました。紹介した症例以外にも一期治療が必要と判断されるケースはあり、患者さんの状況や要望によって個別に判断するのが良いでしょう。
矯正治療のゴールはあくまでも永久歯列で整った状態です。前出の通り、一期治療は使用する装置が簡便で期間も短いため、簡単に行うことができる印象がありますが、将来の顎骨の成長や歯列の変化を見通し、有益性を判断した上で行う必要があるためかえって難しいのです。
歯ならびが気になるからとりあえず並べておきましょう、拡大しましょうといった治療には注意が必要です。どんな症例でも早く治療した方が良いとか、顎を拡大すれば抜歯しないで治せるということは決してありません。
矯正治療にはデメリットもあります。装置をつけること自体がお子さんの心身の負担となりますから、結果が伴わないのであれば、余計な一期治療はしないようにしたいものです。診断の結果、一期治療の有益性が見いだせないと判断されれば、永久歯列まで待つという勇気や決断も必要です。
一期治療を行う症例⑥ 正中離開
お子様の上の前歯の間にすき間が空いたままで気になっていませんか?
このすき間は、前歯の生えかわりの時期によく見られ、通常は隣の前歯が生える頃に自然に閉じて無くなります。稀に上唇の内側から前歯の歯茎に向かって伸びるひだ(上唇小帯)が歯茎の真ん中まで伸びていて、自然な空隙閉鎖を妨げていることがありますので、そのようなときは小帯を外科的に取り除いた上で経過観察をしましょう。
永久歯の前歯が4本揃ってもすき間が空いたままの場合は、自然な空隙閉鎖が難しいか、時間がかかることがあるので、矯正治療で閉鎖することを検討しましょう。審美的に改善して喜ばれるのはもちろんのこと、症例によっては、後の永久歯の生えるスペースが増えて生えかわりがスムーズに進むことも期待できます。