矯正歯科コラム

2020.09.20

歯周病と矯正治療

歯周病は、細菌の感染によっておこる炎症性の疾患です。
進行すると歯を支える土台である歯槽骨が破壊され、骨の支持を失った歯は外力に耐えられず前歯が前傾するなどの位置異常を引き起こし、最終的には歯牙の喪失へとつながります。
歯周病で位置異常をおこした歯列に矯正治療を行うと、適切な咬合関係を再構築してさらなる咬合崩壊を防ぐことができます。
歯列が整ってプラークコントロールをしやすい口腔環境になるとともに、その後の歯科治療において、歯を削る量や神経を取るリスクを減らせることで今後の歯牙の寿命を伸ばし、患者さんのQOLの向上に大きく寄与できる可能性があります。

歯周病が進行し、外力に耐えられず前歯が前傾してきた。その結果、若い頃に比べ口元が著しく突出してきたことも気になる。診査の結果、上の前歯2本と下の前歯4本(×印)は状態が悪く保存不可とした。

 

治療開始の時期は?

歯ぐきに炎症が残ったまま矯正治療をすると歯周組織のさらなる破壊が進行すると考えられています。そのため歯周病の初期治療が終わり、炎症のコントロールと患者さん自身で充分にブラッシングができるようになってからでないと矯正治療を行うことはできません。
かかりつけ医と矯正医が連携して慎重に判断します。

治療の内容は?

矯正治療は通法どおり行います。
矯正治療が終わった後は、適宜かかりつけの一般歯科医で歯冠修復(差し歯治療など)を行います。
状態が悪く予後不良と判断される歯がある場合は抜歯し、状況に応じて矯正治療でスペースを閉じるか、矯正治療後の差し歯やインプラント処置で対応するかのどちらかにします。

①矯正治療開始:予後不良とされた前歯6本のうち、上下左右1本、計4本を抜歯し、隙間を利用して前歯を後退させる

②矯正治療がおわったところ

③予後不良の下の前歯を2本抜歯し、ブリッジ補綴(差し歯)

④矯正治療後2年

 

一般歯科医と矯正歯科医が連携し、放置すれば咬合崩壊する口腔環境を再生することで、患者さんの健康寿命を引き延ばすことが期待できます。
興味のある方、将来に不安のある方はお気軽にご相談ください。