矯正歯科コラム

2021.05.23

動かしたい歯と動かしたくない歯を区別する

矯正治療で目標の位置まで歯を動かすにために、装置を工夫して動かす歯と固定する(動かさない)歯を分ける必要があります。

例えば、出っ歯の治療のために抜歯をしたときは、抜歯してできたスペースに向かって、できるだけたくさん前歯を後ろに動かすことが必要です。奥歯が前に移動してスペースが閉じてしまうと、その分前歯を後ろに下げるスペースが減ってしまうからです。 今回は移動歯と固定歯を区別する方法について説明します。

①ワイヤーで工夫する

奥歯が前に移動しないよう、奥歯の装置の手前にワイヤーで止めを作ると、奥歯の動きを止めることが可能です。

②ゴムを使用する

患者さんに協力していただく顎間ゴムで、動かしたくない方向への歯の移動を抑制することができます。ゴムの効果は、患者さんの協力度により効果が大きく変わるため、指示通りにゴムを使用していただくことが大切です。

③インプラントを固定源として使う

歯ぐきの骨の中に小さなインプラントを入れ、固定として使用します。①②の手段だけでは目的にかなった歯の動きが難しいときに使用します。

固定させる歯と移動させる歯を柔軟に区別できることが従来のブラケット治療の大きなメリットです。
固定を増やす手段はこれ以外にもたくさんあり、患者さんの状況に合わせて方法を使い分けていきます。

2021.05.14

失った歯をそのままにしていると

年齢を重ねるにつれて、虫歯や歯周病などで歯を失ってしまうこともあると思います。
今回は失った歯の場所をそのままにするとどうなるかを解説したいと思います。

①隣の歯が傾いてくる

歯を失うと、失った部分の機能を維持するための歯の自然な移動が起こります。
その動きのひとつとして、隣の歯が抜けたところに向かって傾いてきます。

②向かい合わせの歯が伸びてくる

同じ理由で、咬み合わせで対になる歯(上が抜けた時は下の歯)が、咬み合わせの接触を求めて伸びてきます。

これらの反応が続くと、咬み合わせがだんだん悪くなります。また、生じた歯列不正により歯磨きがしにくくなることで次のお口のトラブルの原因となり、さらに広範囲で歯を失うリスクとなります。

③歯茎が痩せてくる

歯を失ったところは、次第に歯を支えていた骨が薄くなってきます。そのため、差し歯で修復しても見た目に問題がでたり、インプラントを埋入するための骨量が不足することがあります。

歯の喪失は、これから起きる咬合崩壊の入り口です。患者さんの状態に応じて矯正、補綴(差し歯)など適切な治療を組み合わせて口腔内の環境を再構築しましょう。大規模な咬合崩壊がおきたあとでは打つ手は限られるうえ、修復のために膨大なコストがかかります。

私は若い頃の矯正を含めた予防的な歯科治療は、将来への投資と考えています。

2021.02.18

八重歯はかわいい?

私が子どもの頃は、「八重歯はかわいい」とよく言われていました。
昔はタレントにも歯ならびが悪い方が多くいらっしゃいましたが、最近はほとんど見かけなくなりました。

実際には八重歯という歯はなく、歯ならびが悪く、犬歯(前から3番目)が前にはみ出した状態のことです。顎が小さい人の場合、最後に生えてくる犬歯の場所がないのでこうなることが多いのです。

 

見た目はもちろんですが、清掃性(歯みがき)に難があり、また、犬歯は咬み合わせを営むうえで大切な役割があるので、矯正治療できちんと並べておくことが今後のお口の健康を考える上でおすすめです。

ある教科書によれば、顎が小さい人の場合は、歯ならびが悪いか前歯がとびだすかのどちらかになるけれども、美しく見える人は口唇が引きしまっているため歯ならびが悪くなりやすく、それが結果的に八重歯が魅力的にみえる感性につながったのだとか。
つまり、八重歯自体がかわいいのではなく、かわいく見える顔立ちの人に八重歯が多いということですね。

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